2025年10月31日
コラム
甲状腺ホルモンのセーフティ・ネット
甲状腺ホルモンは生命維持に必要なホルモンなので、血液中に一定量が保たれるよう何重ものセーフティ・ネットが敷かれています。
① セーフティ・ネット1(タンパク質結合甲状腺ホルモン)
血液中の甲状腺ホルモンの99%以上はタンパク質と結合していて、ホルモン作用を持ちません。
遊離ホルモンが体に働いて消費されると、結合していたタンパク質がはずれて遊離ホルモンが補充され一定量が保たれます。
② セーフティ・ネット2(T4からT3への変換)
甲状腺ホルモンは2種類(FT3 FT4)あります。
FT4に比べて、FT3は作用が強く寿命が短いという性質があり、それぞれの長所が生かされています。
すなわち、血液中で長時間滞在できるFT4が、肝臓、心臓などの細胞内で強靭なFT3に変換され、無駄のないように協調しています。
③ セーフティ・ネット3(視床下部―下垂体―甲状腺軸ネガティブフィードバック機構)
脳にある視床下部・下垂体が血中の甲状腺ホルモンを調整しています。
もし甲状腺ホルモンが低下すると、視床下部からTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌が増えて、増えたTRHが下垂体からのTSH(甲状腺刺激ホルモン)の分泌も増やします。
甲状腺ホルモン低下症は、直接下垂体にも作用しTSHの分泌量も増やします。
二つの仕組みで増加したTSHは、低下した甲状腺ホルモンを増やし補正します。
反対に、甲状腺ホルモン値が高くなるとTSHが低下し、ホルモン産生を抑制します。
甲状腺ホルモンが増加しても減少しても、一定量が保たれるようになっています。

